黒♭のBLOG

海外在住を通じて日本を客観的に見ることができています。その時々で考えていたことを、自分自身の考えの記録として残せればと思います。

で、JOLEDは大丈夫なの?

そうそう「ジャパンディスプレイ」っていう名称変えなきゃね。ってことは「アジアディスプレイ」かなぁ。国民感情を考えると「アジア」はマズイ。冗談です。

勝手な予想だけど、スマホ向け事業を切り離した後は「ジャパン・オートモーティブ・ディスプレイ」」とか目先を変える可能性はあるのかな。JADかな?これ以上へとへと(Jade)になってどうすんのよ。

それはさておき、JDIの「モバイル事業の縮小、人員削減、役員報酬の削減等による構造改革の実施、並びに執行体制の刷新に関するお知らせ」、読みました。

これによると1200名の希望退職者を募るとのこと。対象者は下の通り。

 2020 年3月 31 日時点で 40 歳以上の社員(JOLED 出向者、海外出向者含む)
 (注1)白山工場組織、V2 ライン及び西日本オフィスの各拠点における勤務者に
 ついては、年齢の制限を設けない
 (注2) 2019 年6月 1 日現在の国内社員及び出向者の数 4,635 名


従業員の1/4を希望退職でリストラ。こりゃ転職市場に大変な数の無能な人間と、決して少なくはない有能な人間を放出することになりそうだ。転職斡旋業者、うはうは。転職活動中の人たちにとってはいい迷惑。
でもこの程度のリストラは応急処置に過ぎないですね。「19年下期には黒字体質に」と言うからにはすぐにでも第二弾リストラ(大手術)の発表がないといけない。私には想像できないが、近い内に何かサプライズがあるんだろうか。

さてJDIはさておき、JOLEDについて一考。
JOLED出向組はそのままJOLEDに移籍する様だが、売りの立っていないJOLEDにそんな人間を引き受ける余裕は無い気がします。工場・製品立ち上げで瞬間的に圧倒的に人が不足していることは日の目を見るより明らか。ですが、JOLEDへの出資についても当初の目論見どおりにはいっておらず、今後の運転資金・開発資金をどこから捻出し続けるのか、風向きが怪しくなってきました。

Printed OLEDが安いなんてのは現段階ではまだ神話の域を出ません。JOLEDが出資者に対してさえ技術を公開していないので本当のところはわかりませんが、顧客を繋ぎ留められるだけの製品面での魅力があるのなら自ら喧伝するはずなのにな、と。

純日本のJOLEDとアジアンなJDIの車載部門はガチのバトルを始めることになりそうで、そのときJOLEDは勝てるんでしょうか。JOLEDは正直JDIよりももっともっと古い日本体質ですよ。JOLEDがやはり技術志向で何とかしようとしているのなら、JDIの二の舞になるのは明らかです。いまさらJOLEDのPrinting technologyなど本当に魅力があるとお考えですか?
​超低コストなPrinted OLEDをちゃんと世に問うて証明して下さい。​それがあなた方の今一番やらねばならないことです。

 

2019/06/13 黒♭
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前回記事:​​JDIと純粋な技術者の悲哀​​
前々回記事:​ここ迄追い込まれてもまだ意味のないことに金と時間を浪費するJDI​

JDIと純粋な技術者の悲哀

ついに元銀行屋さんがCEOですか。

経営が分からん技術屋あがりには、中台ファンドとの丁々発止の議論ができないんでしょうね。

www.nikkei.com

 

​確かにこんな状況に至ってはいまさら技術屋の出番もないでしょうが、そこに至るまでの時間を考えたとき、やはり技術屋あがりにはまともな経営はできないんだろうか?と思ってしまいます。私もしょせん技術屋ですから。この観点からJDIがなぜこんなことになったのかについて一考しました。

技術屋あがりであっても成功した経営者は少なくないわけですが、その中でも京セラ稲盛氏は群を抜いています。その稲盛流というわけじゃないけど、やはり従業員各人のレベルでも経営センスは必須だと思うわけです。それは海外での勤務経験から。

外国の会社って基本的には個人事業主の集まりみたいなものとも言えます。つまり個々人が小さな経営者なんです。日本に比べ自分の利益が優先する傾向が強い。そのため会社が正しくない方向に向かっているときには、彼らのキャリアが傷ついたり停滞することを恐れさっさと会社を辞めてしまいます。そんな感じなので、それって結局儲かるの?儲からないの?という点は日本人に比べ非常に感度が高いです。
私が言いたいのは、海外の人たちは同じ技術者であってもミニ経営者としての考えが身についているってことです。逆に、日本の技術者は雇われ人であることに慣れすぎて、総てにおいて市場価値というものに鈍感になっていると言えます。

日本のFPD業界が輝かしきころ、私だけでなく多くの業界の人間はこう考えていました。「俺は一生、技術者として食ってくんだ。」ここで言う技術者ってのは所謂その道の専門家。狭~い分野の専門家。
市場の需給バランスが良い方向で維持されている場合は狭い分野の専門家ってのは本当に力を発揮します。しかし一旦需給バランスが長期的に悪い方向に倒れると、ほとんどの専門家なんて市場価値がゼロかマイナスにしかならないんです。
そんな悪い状況下でも市場価値がプラスだと思えるのは下ができる人たちのみ。

 1. 最終顧客に売れる何かを創り出せる者
 2. コストを削減できる方法を考案できる者

1.も2.もつまり利益を生む人間ってこと。当たり前。
なかでも1.について言うなら、それはあくまで「最終顧客に売れる何か」を創り出せる者であって、日本の会社の経営方針の枕詞になりがちな「差別化できる何か」「競争力ある何か」「高付加価値な何か」「コア技術を進化させさた何か」とかでは無いって点は実に重要です。
結局、製造業だって第三次産業と同じということ。第三次産業って、そのまま放っておいたら無価値なところから価値を産み出す産業ですよね。技術屋であっても常にそういう発想で考えていることが必要。


今までJDIがやってきたことは第二次産業のスケールアップに過ぎないのであって、誰が経営者であっても結果は同じだったことでしょう。やるべきだったのは、第三次産業化を強く意識した技術開発・市場開発であった。この点で純粋な技術屋あがりには限界があったんだと思う。

だからと言ってその答えが、香りの出るディスプレイってのは余りにトンチンカンすぎる。そりゃ首にしたくもなるさ。

monoist.atmarkit.co.jp

2019/06/12 黒♭
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前回記事:ここ迄追い込まれてもまだ意味のないことに金と時間を浪費するJDI
前々回記事:JDIは旧態依然とした日本社会の象徴

ここ迄追い込まれてもまだ意味のないことに金と時間を浪費するJDI

テクノロジー・ジャーナリストとか言う、提灯記事しか書けない記者連中に物申したい。
「こんなもん↓製品にできたところで収益改善には一切貢献しない。JDIがやるべきことは、Smartphone向けディスプレイ事業の抜本的リストラと車載用事業への集中だ。」なぜそう言えないのか。
提灯記事しか書けなかったジャーナリストはJDIの片棒を担いだ国賊である。具体的な名前を出したい誘惑に駆られる…。

av.watch.impress.co.jp

 

でも、そもそもこれって台湾のJavishのパクリだし。

​​

asia.nikkei.com

robotstart.info

 

パクリはさておき、こんな小さなパネルが予想外に売れた所で白山工場で作れるわけじゃないし。こんなのSONYとかEPSONとかJasperとか、その道の専門メーカーにやらせときゃいいんだよ。
JDIにはSONY,ESPONの出身者も多いので自分たちが意味がないことをしている(させられている)ことは分かっているはず。そういう人達のまともな意見が通らないこと自体が、JDIがここまで追い込まれる原因の一つになったことがまだこの状況になっても分からないんだろうか。

​​
Smartphoneビジネスで大赤字を垂れ流す元凶は白山工場。そこの稼働率をどう高めるかが再優先事項なのに、CES Asiaでアピールしているのが香りが出るディスプレイとか意味ワカンネ。

所詮キワモノしか開発できないミスターイトウに、JDIで一体何ができるかってーの。
ハイアールでも通用しなかった人間がどうして中国に勝てるのか。
産業革新機構もどうしてこういう駄目駄目経営者ばっかりを推してくるのかね。意味わからん。

www.nikkei.com

 

くだらないことやってないで超低コストで製造できる様に総てを見直すべき。高性能・高機能・高品質を実現することを前提とした重いラインはさっさと強制償却して身軽にしないといけない。ま、中国資本が入ったら自動的にそうすることになるだろうけどさ。
もともとそんなこと自分たちの手でできただろうに、こんな状況になるまで盗人に追い銭を続けやがって。あのな、そのお金我々の税金だぞ。フザケンナよ。金返せ。

 

2019/06/09 黒♭
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前回記事:JDIは旧態依然とした日本社会の象徴
前々回記事:JDIはどうなってしまうのだろう

JDIは旧態依然とした日本社会の象徴

「技術が世の中を変える。」私の大嫌いな技術至上主義。
これを単純に信じ続けてきた日本の古き製造業各社は皆、会社が消滅するかもしれない危機に際して変わらざるを得なくなり変わって来た。変わらなきゃいけなかった時期に変わらないぞという選択をしたのがJDI。

技術至上主義は日本経済が右肩上がりだった時代の不良資産。
当時の経営者たちはこう言っていた。「金の心配は俺たちがするから君たちはちゃんと技術開発をしてくれればいい。」真に受けた技術者たちは技術開発に一心不乱に取り組む。経営層は銀行に「うちの技術者たちはこんな技術を開発しているからお金貸してよ」と言う。それで技術開発がまわり、実際開発に成功する。
このスキームだけで十分だった素晴らしい時代。それが長く続き過ぎた。


夢よもう一度。
度々JDIは市場に自らの価値を問う機会を放棄し、政府から金をむしり取ることを考えた。これに乗っかった腹黒い某官僚。官僚様に言われれば言うことを聞かざるを得ない銀行。こんなやりとりがあったハズだ。
銀行「解りました、解りました、資金は提供しますよ。提供するからせめてその裏付けを下さい。」
JDI「技術力は世界一です。世界最大の工場も作るので価格も圧倒的に安くなります。この技術力と製造力で圧倒的な市場シェアを取るので将来の回収は容易です。」
銀行「(そんな説明では納得できないけどこれ以上小役人と揉めるのは嫌だから)解りました。」

てな感じで、実際には実ビジネスとは全く関係のないスキームで資金調達できちゃったんだが、JDIの経営層はこれを技術力が買われたものと毎度毎度勘違いした。
で、最終的に潰れかかって中国資本に買い叩かれている、というお粗末さ。


何が駄目だったか。既に政府しか金を出してくれない状況なのに、私達の技術力にはまだ凄い市場価値がある、と言い続けたこと。きちんと外部の意見を聞いて人・組織・設備のリストラを断行し、最小限の投資で技術力を高め、長い目で縮小均衡の方向に持っていけばここまで酷いことにはならなかった。投資家らにも同じことを言われていただろうことは想像に難くない。

変わるべきチャンスは間違いなくあった。そのチャンスを逃して国民の資産であるJDIの市場価値を最低にまで貶めた経営層。あなた方の責任は万死に値する。

2019/06/07 黒♭
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前回記事:JDIはどうなってしまうのだろう
前々回記事:日本でもuLEDの開発が始まった…かな

JDIはどうなってしまうのだろう

JDIは一体どうなってしまうんだろうか。

biz-journal.jp


皆んな自宅を離れ単身赴任で頑張っているところに、Smartphone用ディスプレイ事業の切り離しとか。Smartphone事業を切り離したら従業員の6割以上は雇えなくなるであろうと予測。知り合いが多いだけに本当に心配。
一気に離職者・転職希望者を市場に溢れさせ労働者の市場価値を下げるのも、誠に迷惑極まりない。ひとごとじゃない。

こんな状況になるまで何も手を打てなかった経営陣の責任は極めて重大。でもそういった役員達はまだJDIに居座っていたりする。他人にコミットメントはさせるくせに自分は責任を取らないってどういう職業感・倫理観なのか。少なくともこのこと一つをとってもなぜJDIがここまで追い詰められたかが良く分かる。


JDI設立時点で中国資本を導入して白山工場は中国に作るべきだった。私の周辺の皆が皆同じ意見だった。結果的に底値で中国資本傘下になり、資金回収の機会を失った。彼ら以外は皆が皆、こういう状況になることは分かっていた。外から見た方が真実が見える、の典型的なケース。

なぜこうなったのかについては色々と思うところがある。JDI設立以前も以後も、さらには他の日本の会社にも当てはまるであろうことについて、次は語ろうと思う。

 

2019/06/06 黒♭
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前回記事:日本でもuLEDの開発が始まった…かな

日本でもuLEDの開発が始まった…かな

マイクロLEDについて少し話を。

日本でもやっとマイクロLEDの研究開発が始まったとのニュース。もう本当に動きが遅くて嫌になる。

tech.nikkeibp.co.jp

まだ今は少しやってみるかの段階なので本気は全く感じませんが、ビクビクしながらも最初の一歩を踏み出した感じですかね。


数年前にマイクロLEDの開発を始めたときから協力企業を探して来たけど、昨年のAUOのSIDでの発表以前にはだ~れもマトモに話を聞いてくれませんでした。LED実装とか転写とか日本が得意そうな分野での技術開発が必要で、海外のマイクロLED開発企業が皆んなこぞって日本企業にその部分での共同開発を望んていたのに誰も相手にしてくれない、という次第。

チャンスが勝手に向こうからやって来ているのに無視するってのは一体どういう了見なのか。本当に先を見る能力が無いなぁ。

日本の会社って本当に失敗を恐れるんだなぁ。「成功のための失敗を恐れるな」的なことは従業員に言うくせに、会社自体は挑戦しないという矛盾。失敗したら離職するくらいの覚悟がなきゃいけないんだけど、転職がそんなに怖いんですかねぇ。やはり労働力の流動性の低さがリスクテイクできない理由なのだろうか。

それでもマイクロLEDの本格普及にはまだまだ10年超の時間がかかるのは間違いない。まだ間に合うから日本のメーカー様方、本気で取り組んで下さい。宜しくお願いします。

2019/06/04 黒♭

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新年挨拶の「スピード感を持て!」

スピード感を持ってやれ!

 こういう言葉を社長の年始挨拶とか経営方針大会などでよく耳にしませんか?

 そんなこと社長にわざわざ言われなくても分かってんだけどできねーものはできねーんだよ!と思っているあなた、私もずっとそう思ってました。翻訳して差し上げましょう。

 社長「てめぇらいつも計画が遅れる言い訳ばっかりしやがって、たまにはこうやればもっと早くなりますとか、計画より早くできましたとか、そういうことができねぇのかよ!俺が若い時はもっと早くできたのに、何でこんなことに時間がかかるんだっつぅの。てめぇらの馬鹿さ加減のせいで、何で俺がこんなに心労を抱えなきゃいけないんだだよ。」
とまぁこんな感じです。ただの愚痴でしょ。年始挨拶とか経営方針大会にふさわしい言葉なんでしょうかねぇ。経営者自身の能力の無さを露呈しちゃってるってことに気がつかないのね。

 昔勤めていた会社がまさにその典型でしたが、その当時は違和感を感じつつもある程度納得していました。でもその後海外企業に移ってから、これが異常な状態であることに気がつきました。

 海外企業の経営者、彼らは社員が納得できる経営戦略が無ければ、社員はもっと戦略が優れた企業にさっさと移ることを知っています。ですから彼らは真剣に戦略を考えます。さらに、この戦略を社員に浸透させるために経営者が直接語れる機会は、ある程度の規模の会社になれば実に少ない。年に2~3回というところでしょう。その少ない機会に愚痴を言ってる場合じゃない。少ない機会で、どうやって社員を納得させるか、どうやって社員を奮い立たせるか。そこが一番重要な訳です。

 「スピード感を持て!」とかが今年のスローガン、経営方針とかあり得ません。スピード感を持たせるために経営側として何ができるのかが大事なのであって、精神論で言うだけなら小学生でもできます。ホームルームでの「A君の掃除が遅いのでみんなが迷惑してまーす。A君は掃除を早くやって欲しいでーす。」と何が違うのでしょう。

  確かに、業務スピードを早くするための提案をできない中間管理層が一番悪いのかもしれません。しかし大抵の場合、中間管理層の積極的な提案を阻害しているのは社内外の明文化されたルール、有象無象の不文律・常識だったりします。それらを打ち破ることができるのは経営者以外にないんです。

報道によると前職の会社では2018年の新年挨拶でも、「製品開発のスピード感がない。新興国に負けてしまう。早くしろ早くしろ!」と言ったそうです。経営者として全く成長してないなぁと呆れると共に、こんな頭の悪い経営者の元で働く必要がなくて本当に良かったと今更ながら思いました。

 読書感想文て小学生のころ書かされましたよね。私が小学生のとき先生から良いアドバイスをもらったんです。『~と思いました』を書くのをやめてみろ、と。たったそれだけで感想・感情を表現する方法を考えざるを得なくなった訳です。結果その時は全国なんたら賞とかいう結構凄い賞を戴いちゃいました。

 経営者、経営層の方々に申し上げます。「スピード」「頑張れ」を禁句にして下さい。たったそれが言えなくなるだけで、真剣に戦略を考えざるを得なくなります。その戦略の結果として、スピード、社員の頑張りが後からついて来ますから。

 

黒♭