黒♭のBLOG

海外在住を通じて日本を客観的に見ることができています。その時々で考えていたことを、自分自身の考えの記録として残せればと思います。

JDIは旧態依然とした日本社会の象徴

「技術が世の中を変える。」私の大嫌いな技術至上主義。
これを単純に信じ続けてきた日本の古き製造業各社は皆、会社が消滅するかもしれない危機に際して変わらざるを得なくなり変わって来た。変わらなきゃいけなかった時期に変わらないぞという選択をしたのがJDI。

技術至上主義は日本経済が右肩上がりだった時代の不良資産。
当時の経営者たちはこう言っていた。「金の心配は俺たちがするから君たちはちゃんと技術開発をしてくれればいい。」真に受けた技術者たちは技術開発に一心不乱に取り組む。経営層は銀行に「うちの技術者たちはこんな技術を開発しているからお金貸してよ」と言う。それで技術開発がまわり、実際開発に成功する。
このスキームだけで十分だった素晴らしい時代。それが長く続き過ぎた。


夢よもう一度。
度々JDIは市場に自らの価値を問う機会を放棄し、政府から金をむしり取ることを考えた。これに乗っかった腹黒い某官僚。官僚様に言われれば言うことを聞かざるを得ない銀行。こんなやりとりがあったハズだ。
銀行「解りました、解りました、資金は提供しますよ。提供するからせめてその裏付けを下さい。」
JDI「技術力は世界一です。世界最大の工場も作るので価格も圧倒的に安くなります。この技術力と製造力で圧倒的な市場シェアを取るので将来の回収は容易です。」
銀行「(そんな説明では納得できないけどこれ以上小役人と揉めるのは嫌だから)解りました。」

てな感じで、実際には実ビジネスとは全く関係のないスキームで資金調達できちゃったんだが、JDIの経営層はこれを技術力が買われたものと毎度毎度勘違いした。
で、最終的に潰れかかって中国資本に買い叩かれている、というお粗末さ。


何が駄目だったか。既に政府しか金を出してくれない状況なのに、私達の技術力にはまだ凄い市場価値がある、と言い続けたこと。きちんと外部の意見を聞いて人・組織・設備のリストラを断行し、最小限の投資で技術力を高め、長い目で縮小均衡の方向に持っていけばここまで酷いことにはならなかった。投資家らにも同じことを言われていただろうことは想像に難くない。

変わるべきチャンスは間違いなくあった。そのチャンスを逃して国民の資産であるJDIの市場価値を最低にまで貶めた経営層。あなた方の責任は万死に値する。

2019/06/07 黒♭
(Rakuten Blogから引っ越しました。)

 

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