黒♭のBLOG

海外在住を通じて日本を客観的に見ることができています。その時々で考えていたことを、自分自身の考えの記録として残せればと思います。

ジャパンディスプレイ、何もしなかった罪 #1

先の記事で言った通り、7年もの間、諸問題に何ら対処しなかったJDI経営陣の無責任について語る。

「何もしなかったとは失敬な!」恐らく彼らからはこう反論されるだろう。
「戦略的に技術の差別化と他社先行を狙い、インセルタッチフルアクティブを開発してきて、それはほぼ狙い通り成功した。」と。

確かに一時的とは言え他社に先行できたことは事実である。しかし、技術の差別化という点では明らかに不十分であった。その後すぐにJDI製のパネルよりも性能や品質が少なからず悪いものの、より安価なものが他社で開発されるにつれ、JDI製を選ぶ理由がなくなった。また、他社LCDとの戦いに明け暮れているうちに有機ELというゲームチェンジャーに市場を持っていかれてしまった。

そもそも戦略的に間違っていたのである。

だが、その結果的に間違った戦略でさえ、下で述べる縛りを徹底的に排除して経営としてやるべきことをやっていれば成功できた可能性がある。

ジャパンディスプレイの設立から7年。その間何もしなかったのはナゼか。関係者の話を総合すると、下の縛りがあったとのことだ。

(1) 安倍政権に対する忖度の縛り
(2) 元会社の縛り
(3) 社外に対するアナウンスの縛り

それぞれ説明していこう。

(1) 安倍政権に対する忖度の縛り
 JDIは2017年にも倒産の危機があった。結果的に銀行、産業革新機構からの借入、JOLEDへの資産押しつけで倒産を回避したのだが、このときも銀行側としては出資に乗り気でなかったと言われている。しかしこの頃、安倍政権はアベノミクスの効果が全く出てないと野党に盛んに責められていて、そんなタイミングで国の資金を注入したJDIを倒産させる訳にはいかなかったのだ。経営の常道としてはこの時点で失敗を認め膿を出し切るべきだったがその絶好の機会を失ってしまい、より経営を悪化させる原因を作ったとも言える。
 残念なことにこの縛りは今時点でも続いている。7/21の参院選前にJDIが倒産することは絶対に許されない状況だ。現在の中台ファンドからの資金調達は所詮当面の運転資金を賄うだけに過ぎず、これ以上の資金調達が難しいなかでは第二弾の抜本的なリストラが急務である。昨日発表されたスマートフォン事業の分社化がそれに相当すると思われるが、実施時期は本年12月末である。ドッグイヤーの世界で半年以上ものブランクは自然死を意味する。
 JDIの経営にスピード感が無いと言われているのは、主にこの縛りが大きい。

次回、(2) 元会社の縛りについて語る。

 

2019/07/13 黒♭

 

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