黒♭のBLOG

海外在住を通じて日本を客観的に見ることができています。その時々で考えていたことを、自分自身の考えの記録として残せればと思います。

ジャパンディスプレイ、何もしなかった罪 #2

ジャパンディスプレイ設立から7年もの間、何もしなかった罪について引き続き語る。関係者の話を総合すると、下の縛りがあったとのこと。

(1) 安倍政権に対する忖度の縛り
(2) 元会社の縛り
(3) 社外に対するアナウンスの縛り

今回は (2) 元会社の縛り について説明していこう。

(2) 元会社の縛り

JDIはソニー・日立・東芝のモバイル・ディスプレイ事業を統合して設立された会社である。JDI統合前にも、それぞれの会社に三洋、エプソン東芝パナソニック、キャノン等が統合されていた。JDI設立後も元会社、元々会社の縛りがあったと聞く。

1年前の時点でも、ソニー出身者の給与は日立・東芝出身者の給与に比べ異常に高かった。ソニー以外の会社の出身者のモチベーションが大きく下がるのは避けられなかったろう。
ソニー出身者から言わせれば、初期のJDIの開発・営業を支えたのは旧ソニーが育ててきた技術だったことは紛れもない事実であった。彼らには、JDIを牽引してきたというプライド、そして高い給与にふさわしい働きをしているという思いもあったろう。しかし、他社出身者からかけられる有象無象のプレッシャーはつらいものがあったのではないか。実際その後、ソニー出身者の相当数の技術者がJDIを自主退社している。

何れにしても、ソニー出身者、他社出身者、それぞれのサイドからの愚痴が社外の人間に伝わってくるくらいなので、内部的には相当な問題だったことが想像できる。

さらに組織面でも出身企業毎の単位を積極的に解消することはしなかった。例えば、日立出身者で固められた組織を日立出身者が管理する、そういう状態をずっと続けてきたのだ。経営側の言い訳としては、顧客とのビジネスを円滑に継続するため、ということらしい。
しかしこれでは統合によって得られる効果など何一つ産まれないではないか!出身会社同士の不毛な内戦になるのは日の目を見るより明らかで、競合他社との戦いこそに割くべき戦力が大幅に削られることは避けられない。

なぜこんな状況を放置してしまったのか。

確かに、産業革新機構経産省による経営介入がこの問題を解消できなかった主原因であることは間違いない。ただ、経営危機の真っ只中にあって役人からも見放された今になっても今だにその組織を継続していることを鑑みると、これはJDI自身の問題だと考えざるを得ない。

経営者としては、役人と刺し違えるくらいの覚悟をもってこの問題点を早い段階で解消する必要があった。経営者の責任とはそういうものではないのか?

それが唯一できたとすれば、産業革新機構経産省からの縛りが最も少なかった、エプソン~ソニー出身の有賀氏(2015-2018 代表取締役社長)だけだったろう。彼にはそうした問題を解決してくれることを期待していただけに、大変がっかりしたことは否めない。

2019/07/14 黒♭

前回記事:ジャパンディスプレイ、何もしなかった罪 #1
前々回記事:死臭のするジャパンディスプレイに集まるハイエナライター