黒♭のBLOG

海外在住を通じて日本を客観的に見ることができています。その時々で考えていたことを、自分自身の考えの記録として残せればと思います。

新年挨拶の「スピード感を持て!」

スピード感を持ってやれ!

 こういう言葉を社長の年始挨拶とか経営方針大会などでよく耳にしませんか?

 そんなこと社長にわざわざ言われなくても分かってんだけどできねーものはできねーんだよ!と思っているあなた、私もずっとそう思ってました。翻訳して差し上げましょう。

 社長「てめぇらいつも計画が遅れる言い訳ばっかりしやがって、たまにはこうやればもっと早くなりますとか、計画より早くできましたとか、そういうことができねぇのかよ!俺が若い時はもっと早くできたのに、何でこんなことに時間がかかるんだっつぅの。てめぇらの馬鹿さ加減のせいで、何で俺がこんなに心労を抱えなきゃいけないんだだよ。」
とまぁこんな感じです。ただの愚痴でしょ。年始挨拶とか経営方針大会にふさわしい言葉なんでしょうかねぇ。経営者自身の能力の無さを露呈しちゃってるってことに気がつかないのね。

 昔勤めていた会社がまさにその典型でしたが、その当時は違和感を感じつつもある程度納得していました。でもその後海外企業に移ってから、これが異常な状態であることに気がつきました。

 海外企業の経営者、彼らは社員が納得できる経営戦略が無ければ、社員はもっと戦略が優れた企業にさっさと移ることを知っています。ですから彼らは真剣に戦略を考えます。さらに、この戦略を社員に浸透させるために経営者が直接語れる機会は、ある程度の規模の会社になれば実に少ない。年に2~3回というところでしょう。その少ない機会に愚痴を言ってる場合じゃない。少ない機会で、どうやって社員を納得させるか、どうやって社員を奮い立たせるか。そこが一番重要な訳です。

 「スピード感を持て!」とかが今年のスローガン、経営方針とかあり得ません。スピード感を持たせるために経営側として何ができるのかが大事なのであって、精神論で言うだけなら小学生でもできます。ホームルームでの「A君の掃除が遅いのでみんなが迷惑してまーす。A君は掃除を早くやって欲しいでーす。」と何が違うのでしょう。

  確かに、業務スピードを早くするための提案をできない中間管理層が一番悪いのかもしれません。しかし大抵の場合、中間管理層の積極的な提案を阻害しているのは社内外の明文化されたルール、有象無象の不文律・常識だったりします。それらを打ち破ることができるのは経営者以外にないんです。

報道によると前職の会社では2018年の新年挨拶でも、「製品開発のスピード感がない。新興国に負けてしまう。早くしろ早くしろ!」と言ったそうです。経営者として全く成長してないなぁと呆れると共に、こんな頭の悪い経営者の元で働く必要がなくて本当に良かったと今更ながら思いました。

 読書感想文て小学生のころ書かされましたよね。私が小学生のとき先生から良いアドバイスをもらったんです。『~と思いました』を書くのをやめてみろ、と。たったそれだけで感想・感情を表現する方法を考えざるを得なくなった訳です。結果その時は全国なんたら賞とかいう結構凄い賞を戴いちゃいました。

 経営者、経営層の方々に申し上げます。「スピード」「頑張れ」を禁句にして下さい。たったそれが言えなくなるだけで、真剣に戦略を考えざるを得なくなります。その戦略の結果として、スピード、社員の頑張りが後からついて来ますから。

 

黒♭